Talent No.1

SAYA_KASHIWAKURA
CEO/ Psychologist / Brain Scientist

  • #まだ見ぬ世界をみてみたい
  • January 17th, 2019
Profile

岡山生まれ。東京大学にて史上初めて学部生時に卒業生総代・東京大学総長大賞を同時受賞。現在は東京大学大学院にて脳科学・心理学の研究を行うと同時に株式会社アンシーン代表取締役を兼任。会社のコンセプトは社名「アンシーン」に込められており、人は心から“安心”して自分を出せる場所があって、初めてまだ見ぬ(“unseen”)世界を見る冒険に旅立つことが出来るという意味を掛けて命名。

自分を変えて世界を変える

「まだ見ぬ世界を見てみたい」と初めて思ったのは中学生のときです。その頃、一度この世界に絶望したことがありました。「この世界には戦争や貧困があって、多分死ぬまでこの世界は変わらない。そんな世界にただ生きて死んでいくだけの人生に何の意味があるのだろう」と思ってしまったんです。

でも、ある時、たしか自己啓発系の本の中で「すべての根源は人の心にある」「自分が変われば世界が変わる」という文章に出会いました。その文章に衝撃を受けると同時に、「自分が変わったら、その結果として世界平和が実現されるかもしれない。もしその世界が見られるんだったら私は見てみたい」と思いました。それが自分自身とこの世界に希望を持てた瞬間だったんです。その時以来「まだ見ぬ世界を見てみたい」という思いでやっています。

「自分の生きている意味って何だろう」と絶望するきっかけはなんだったんですか。

決定的な引き金となる体験は思い当たらないんです。でも、些細な事が積み重なってそう思うようになっていったんだと思います。例えば、小さい頃、私はあまり友達作りが得意ではありませんでした。「自分と好き好んで仲良くしたい子なんて誰もいない」と思っていたんです。だから、孤独を感じながら自分の中で悶々と考える時間が生まれる中でそう感じるようになっていったのだと思います。

形無しではなく、型破りになりたい

東大を目指そうと思ったきっかけはあるんですか

理由はいくつかあるんです。「心理(真理)を探求したい」という思いももちろんあったのですが、「自分と好き好んで仲良くしたい子なんていないんだから、自分の存在価値を証明しないといけない」という強迫観念に駆られて東大を目指したところも大きかったです。他には戦略的な理由もあって、将来新しいことをするときには東京大学という学問的なバックグラウンドがある方が信頼してもらいやすいんじゃないかなと思ったのも理由の一つです。

後は、母がよく言っていた歌舞伎の言葉にも影響を受けました。「歌舞伎には『型破り』と『形無し』という言葉がある。何も型を身に着けずにただ自由奔放にやると形無しになってしまうけれど、一度型をしっかりと身に着けた上でそこから自分の色を出していくと型破りな人間になれる」っていう話をよくしてくれていたので、将来は型破りな人間になりたいと思うようになっていました。私自身は根が自由奔放なところがあるので、大学入試を通して一番思考の型を身につけられるであろう東大にチャレンジしました。

なぜ型破りしたいと思ったんですか

一番の理由は中高時代に感じていた疑問にあると思います。当時は授業受けながら「この授業はいったい何のためにあるんだろう」と思っていて。今となっては授業内容の価値に少しずつ気づけているところもあるのですが、当時の私は全くそう思えなかったんです。将来、単純作業や大量暗記とかは機械が担える時代になっていくのに、なんで機械で代替できる人間を量産する教育システムになっているのだろうって思っていました。だから、自分はこの既存の型から抜け出したい、このシステムを刷新したい、という思いが型破りへの憧れに繋がったのだと思います。

心の安心に基づく信頼関係があったから

ご両親はどのようなお仕事を?

父は医者で研究をしているときもありました。私は覚えていないのですが、私が歩き始めの頃、転んだときにちゃんと手が前に出せるように敢えて転ばせる練習をさせてくれていたそうです。普通だと転ばないように気を配ることが多いと思うんですけど、上手に転ぶ練習をさせてくれていたのはありがたいです。

母は小学校の先生をしています。母はとことん私のことを受容してくれました。幼稚園の頃の私はレストランに入るとすべての机の下を走り回って、挙句の果てにレストランから出ていってフロアー全部を探検して帰ってくるやんちゃな子だったんです。でも、母はそんな私に声を荒げなかったんです。お店を出るときには他のお客さんに謝ってから出たそうなのですが、ありがたいことに皆さんも私のことを「かわいいな、微笑ましいな」という目で見てくれていたそうです。

母親との関係

母とはテスト期間で部活が休みのときによく話していました。本来であればテスト勉強をする期間なのに「こっちの方が大切だから」といって夜通し話を聞いてくれていたんです。母は話を聞くのが上手でどんな自分でもそのまま出すことができました。

お母さまの授業を受けてみたいです。お母さまは学校の授業でも、沙耶さんと同じように子供たちに接しているんですか

私に対しては11で、クラスとなると1対多になるので、多少やり方は変えていると思うんですが、根幹にあるポリシーは、変わってないと思います。母から学級運営や授業方法の話を聞かせてもらうことがあるのですが、考え方がとても本質的で学ばせてもらうことが多いです。

コンセプトと課題

私の人生のコンセプトの一つは「希望」です。過去の自分が一度世界に絶望したところから希望が持てるようになったことが自分にとってはとても大きな経験だったので。自分自身の可能性とこの世界の可能性を信じられて、自分の行動で自分自身の人生にもこの世界にも変化を起こせるはずだって希望が持てる世界に近づけていきたいと思っています。

そのためには、人的環境が一番大切だと思っています。 1年程前に、経営の勉強会に参加したことがあったんです。その際、自分の将来の夢について語る時間があったんですが、同じグループの人の態度にびっくりしてしましました。その人はとことん他の人の夢をつぶそうとする発言ばかりされていて。そのときはただただ驚くことしかできませんでした。でも、後から「そういえば、今までの自分の人生でこういう風に夢をつぶすそうとしてくる人に会ったことがないな…自分は素敵な大人の方に囲まれてきたんだ」と気付きました。

今の自分があるのは今まで出会ってきた人たちのおかげなので、随分先の話になってしまうかもしれませんが、将来的には人と人とが互いに勇気づけ合えて、人が希望を持って生きられるシステム作りをしたいです。ただ、その際「希望」という明るい側面だけでなく、人の残虐性やエキセントリックな部分もしっかり踏まえた上で設計したいとも思っています。心理学を勉強していると、どんな人間にも残虐性やエキセントリシティはあるし、それが生存上必要な場面があったからこそ存在してきたことに気づかされたので。

沙耶さんの中にも残虐性、エキセントリック性はありますか。

もちろんありますね。今までにも、人の不幸を願ってしまうことが何度もありました。例えば、小さい頃は友人関係のコンプレックスが酷かったので、その反動で排他意識が強かったです。常に自分の居場所がなくなることを恐れていたので、その居場所を脅かす存在なんじゃないかなと思った相手に対してはすごい警戒態勢を引いていました。これはまだ序の口で、自分で見逃している残虐性やもっと深い闇はたくさんあると思います。

今なにが問題だと思っていますか

やはり、人的環境ですね。特に、心理学を学んできた経験や私自身の経験から、根幹の部分にあるのは、家庭環境だと思っています。ただ、極論を言ってしまえば、子育てに正しいとか間違っているってことはなくて、何があっても全てを人生の糧にできる可能性はあると思っています。でも、人はとても大きな可能性を持っている存在であると同時にとても弱い存在でもある。だから、可能性を生かすにはどんな自分であっても安心して表現できる場所が必要だと思っていて、そのような場作りをしていきたいと思っています。

そのためにも、引き続き心理学研究をしながら人間の根本原理を探求したいです。一つの切り口として母子間関係から切り込みながら、進化心理学的な視点で人の本質を掘り下げていって、ゆくゆくはその知見を生かしながらアンシーンコミュニティーを作っていきたいと考えています。

どんなに難しい事でも向かっていく過程に意味がある

いろんな人が沙耶さんに会った瞬間にビビッとくるそうですね。国内外に応援してくれる人が多いっていう話を聞くんですけど、ご自身としてはどうですか

ありがたいことに応援してくださる方に恵まれています。その筆頭は家族ですね。母は事ある毎に「沙耶が心から願ったことはなんだってできるよ」「沙耶には無限の可能性がある」と小さい頃から言ってくれました。そのおかげで、自分自身には大きな変化を生み出す力がきっとあるはずだっていう根拠のない自信を持つことができるようになりました。

東大で総長大賞を取ったときも、母には「次は世界だね」と言ってもらい、父には「沙耶はこんなもんじゃない。これからもっともっと活躍するね」と言ってもらいました。その言い方も期待を押し付けるっていう言い方ではなくて、事実として信じてくれている、心から応援してくれている感じで言ってくれるのがありがたかったです。
ただ、今後は周りの人から応援してもらえることばかりではないと思うので、応援してもらえることに感謝しながら、批判を力に変える強さも培っていきたいです。

世界を変えられると思っていますか

自分ひとりでは絶対に無理だと思います。でも、一人ひとりが生かされるチームを作ることができたら世界を変えるポテンシャルを持つことはできるのではないかと思います。チームを作るときには根幹となる理念を大切にしたいです。理念に共感した人が集まって、対話をしながら理念を掘り下げていきたいです。

理念を作ったり対話をしたりするときに鍵になってくるのは言葉だと思っています。
言葉に対しては思い入れがあるんですよね。小学4年生のときにアメリカに行って、全く英語がしゃべれない、友達できない、授業ついていけないという経験をしたことがあるんです。当時は、教科書で顔を隠して泣きながら授業を受けていました。でも、徐々に英語を身につけていき、友達ができて授業が分かるようになって色々な機会も与えてもらえるようになっていきました。そのような経験をしたので、言葉は自分にとって自分自身を表現できるもの、自分自身の可能性を広げてくれるものだと感じています。

ー 沙耶さんの人生の「気づき」「エッセンス」「メッセージ」を投げかけてもらえたら。

大切にしている言葉の一つに「その山を登るのは、まだ見ぬ世界を見たいから」という言葉があります。何かをするかしないを決めるときには「この山を思いっきり登った先にどんな景色が見えるだろうか。私はその景色を見てみたいだろうか」と問いかけるようにしています。いつか大切な仲間と共に、心から安心できる場所を胸に抱きながらまだ見ぬ世界を見たいです。

Information

SAYA_KASHIWAKURA

岡山生まれ。東京大学にて史上初めて学部生時に卒業生総代・東京大学総長大賞を同時受賞。現在は東京大学大学院にて脳科学・心理学の研究を行うと同時に株式会社アンシーン代表取締役を兼任。会社のコンセプトは社名「アンシーン」に込められており、人は心から“安心”して自分を出せる場所があって、初めてまだ見ぬ(“unseen”)世界を見る冒険に旅立つことが出来るという意味を掛けて命名。

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