Talent No.15

RANKA_TAKAKUWA
CEO of development company / Menhera

  • #わたしは幸せに病みたい
  • March 21st, 2024
Profile

高桑 蘭佳(たかくわらんか)1994年生まれ、石川県出身。「彼氏を束縛したい」という一心で起業。現在は株式会社メンヘラテクノロジーのCEOを務める。病んだときに相談できるサービス「メンヘラせんぱい」や、イケメンキャストと話せる通話アプリ「DIALS2」など、メンヘラの気持ちに寄り添ったサービス開発を得意とする。自身をメンヘラだと定義しながらもメンヘラという観点から社会学×データ分析の領域で研究を行い、「幸せに病める世界をつくること」を目指している。

IT会社のCEOであり大学院生、そして自身のメンヘラ特性と、メンヘラという事象への興味。彼女から出てくるキーワードをヒントに、彼女の頭の中を覗く。

メンヘラせんぱい誕生のきっかけ

蘭佳さんの中ではメンヘラってどう定義しているのですか?

一番近いのはかまってちゃん。まあ自己愛傾向が強い人っていうか。定義というよりその特徴ですね。認められたい気持ちから来る生き辛さ、みたいなところだと思います。

承認欲求的な?

そうですね、わかりやすくいうと。病院に行って治療する部分と、だれか身の回りで自分の話を聞いたり認めたりしてくれる人がほしい、愛されたいみたいな気持ちってつながってはいると思うんです。でもまたちょっと次元の違う話でもあって。ぜんぶ精神科に行ってどうにかしてもらえるものではないなっていうのは私の感覚としてありますね。

そこの解決してくれるものがなくて生まれたのが、メンヘラせんぱいというサービス?

そうですね。

メンヘラせんぱいは、絶妙なポジションですよね。カウンセリングを受けるとか病院行くとかではなく、もうちょっとライトな感じじゃないですか。

事業を始めたときはあんまりわかってなかったんですけど、メンヘラって精神疾患とはレイヤーがけっこう違うかなと思ってて。メンヘラの研究のベースでもあるんですけど、メンヘラってそのまま精神疾患をさす言葉ではないんです。

精神疾患だけどメンヘラせんぱいを使ってもらいたい層の人もいるし、精神疾患じゃなくても使ってもらいたい層の人もいます。

もしこのメンヘラせんぱいがなかったら、どこで解決するんですかね?

カウンセリングを使う方もいますし、SNSでつながった人に話をきいてもらうことなどが多いなって思います。あとはコンカフェとか、ホストクラブとか女性用風俗、占いとか。

その辺がメンヘラせんぱいのライバル?

広い意味でのライバルですね。

病んでる人は、メンヘラせんぱいをどうやって見つけてるんでしょうか?

今入ってきてくれてるターゲットが適切なのかは検証中で難しいところなんですけど、ほとんどがオーガニックでAppStoreから来てますね。

最近だと、激レアさんを連れてきた。に出演後、その放送の切り抜きがバズったんです。それで共感してくれた人が、メンヘラせんぱいを見つけにきてくれて一気にユーザーが増えると言うことがありました。 

いま、キライな「組織」というものをつくっている

ご自身の会社の社名はどうやって決めたんですか?

メディアアーティストの市原えつこさんって方がいるんです。私が卒論で、「彼氏のツイッターにリプを送ってる女が彼氏と面識あるかどうかを機械学習で研究する」って彼女に言ったら、「メンヘラテクノロジーじゃん、ウケる!」っていわれて。なんかいいなって思って、使っていいですか?って聞いたらいいですよって言ってくれて。

会社の目標など、決めてるんですか?

いや、そこまではまだやってないです。あまりまだ経営視点を持ててなくて、本当に自分たちがほしいものをつくろうというだけの話だったんです。プロダクトづくり以外に興味がない私達っていいなと思うけど、応援してくれてる先輩の起業家からは、心配だと最近言われました。

組織づくりで気を付けてることはありますか?

ちゃんと会社としての体をなそうというのが今年1年の目標で。本当に組織づくりもですし、ちゃんと好きなものをつくれるよう、資本作りのための事業をつくるとか…しないといけないというのは今年の目標ですね。でも、まず私が組織がキライ。(笑)

いいですね。組織嫌いな人がつくる組織。嫌いスタートっていいですよね。

今月末に初めてちゃんとした全体ミーティングをやるっていう。話すことも決まってなくて…そろそろやばくない?みたいな。(笑)話さないといけないことの一つは、私がどういう会社にしていきたいのか、そういう話をもっとみんなに伝えていかないとってアドバイスはもらってて。

みんな在宅ですしね?

社員は一応、若干縛りがあるんですけど…まあ基本は自由です。(笑)

メンヘラ的ビジョン

社員の皆さんは、 蘭佳さんのビジョンに共感してついてきるんですか?

比較的そうだと思います。みんなネットとかメディア経由で会社のビジョンを知るって感じになっちゃってるんですけど…。

私は今まで本当に社会人経験がなくて起業しちゃってるんです。かつ、やりたいことがなくて…本当に軽いノリで、彼氏の社員旅行ついていきたいって感じで起業したんです。束縛したいだけで、どこにもビジョンもなにもないみたいな状態だったんですけどね。

彼についていきたいって想いが純粋でいいですよね。

純粋ですね。起業した時も病んでたので、自分がもうちょっと生きやすくなるプロダクトつくりたいな~という気持ちから始まって、そのままずっときたがゆえに、ちょっとメンヘラのことをわかった気になって、またわかんなくなってを繰り返してて…。

かつなんか、どういう事業をつくっていきたいんだろうとかも、むずかしくなってきました。やりたてのころはもっとシンプルにピュアに考えてたことがいろいろ…知っていくうちにまた難しくなってきて…こういうこともやりたいけど難しい、ということも最近は多くて。

なにが一番難しいですか?

なんですかね……。軸は、本当に幸せに病める世界をつくるってことに変わりなくて、私は幸せに病みたいなと思うんですけど。

社会的な課題として解決したいことはあるんですか。

やっぱりまだメンタルヘルスと一般的にいわれてる領域だけでは拾えない問題もあると思うんですよね。生き辛さみたいなものとか、社会不適合者、メンヘラ、陰キャとかマスじゃないかもしれないけどそういう人たちが幸せな状態をつくるっていうのはやってみたいことかも。

壁となってるのは?

メンヘラをターゲットとした事業価値をどうやって理解してもらえばいいんだろうとは思っています。無限にやり続けていくしかないのかな。私はネットで知り合った人に傷けられたり、友達を頼り過ぎて嫌われるくらいなら数百円を払って知らない人と繋がったらいいじゃんっていう感覚なんですけど、まだ一般的じゃない。でもこの考え方で、メンヘラせんぱいを開発したわけなんです。こういったメンヘラの気持ちをどう表現したらわかってもらえるのか、今考えているところです。

まあ、基本的には気楽にものづくりしたいんですけどね。

メンヘラって精神疾患だけじゃない。だから、幅広くみんなにかかわることですもんね。それこそおばあさん、おじいさんとかにもあることかもしれないですよね。

病むということは欲望が強いということ

ちなみに、病んでるってことはマイナスの状態なんですか?

うーん…それはそうだと思います。

マイナスから0に戻りたいとかプラスになりたいって気持ちがあるんでしょうか?

あ、でも病んでても幸せってことかも。

じゃあもうマイナスのままでいいから、そこから心地よさをつくりたい?

なんか、最初は病んでてもえっと…。病んでても、自分でうまく乗り越えれたりしたらそれで幸せな状態って思ってたんですけど、病まなくなりたいわけでもないなって思ったり、私は病んでる自分も好きなんですよ。そこにアイデアの種があって…。

なんですかね…その、むかついたことや悲しいことをどうにかする、みたいな負の感情を大事にしてるので、それがなくなったら私の価値はなくなるなみたいな。

となると、ある程度の不快感は必要なものですか?

そうですね。

じゃあ幸せに病める世界とは、不快感とか痛み、苦悩を抱えながら希望を見出すということでしょうか?不快をゼロにしたいわけではないですよね。

なんで病むんだろうと考えたときに、一つはまだ仮説段階ですけど、欲望が強いからなのではないか、と。束縛したいとか、欲望がない人って、不満も抱きにくいというか…別にいいじゃないですか。どのような状態であっても。それは別に悪いことではないのですけど。

欲望をコントロールできるできないってまたちょっと別の軸としてあって、でも欲望がコントロールできても自分で押さえつけていれば、それは病んでる状態であったり、できなかったらそれで周りに迷惑かけちゃったり、自分で自分を傷つけちゃったりとかあるかなと思うんです。そう思ったときにその欲望を否定したくないなっていうのが最近のテーマで、でも欲望で身を滅ぼしたらだめだっていうのがあって、それってどういう状態にもっていったらいいんだろうっていう。

欲望っていうのは、もともとあるんですかね?隠してたり抑えてたりするんですかね?環境によっても違うのでしょうか。

環境によって増幅させられることもあるなと思います。今は人の評価が見える時代です。しかも評価軸が多様で、もしかしたら私もTikTokなんかでバズるかもしれない!とみんなが思ってる。でも実態はそうはうまくいかない。すごい可愛いわけでもないのに、なんであの子はバズってるの?!とか思っちゃったり。SNSの環境がなかったら、もともと他人から認められたい、みたいな強い欲望ってないんじゃないかなとか。

欲望の満たし方

TikTokがない場所とか、ジャングルの奥地で暮らしてる民族はそういう欲望をもたないんですかね?

先進国じゃなくても、例えばおなかが減ったなという欲望をコントロールできなくて人を殺してご飯をうばったらダメですし、もうちょっと考えたいですね、欲望は。いいヒントをもらいました。

彼氏を束縛したいというのも恋愛観の一つですけど、例えばアフリカの民族とかですと、結婚した初夜は親友にお願いするっていう、僕らからするとえ?って思う習慣があったりします。社会的な要因によって欲望の種類が変化したりってありそうですよね。

いいねがほしいとかは、アメリカとかだとけっこう誇大性みたいな、自分をアピールするだけで満足することなんですけど、日本みたいな集団主義の国では、他者から評価されることに重きをおく傾向があって。自己愛の研究で評価過敏性という尺度があります。メンヘラを自認している人はこれが高いんです。評価されないとしんどくなっちゃう。と、なるとメンヘラってワードを使ってなくても、それでしんどいなとか生きづらいなって人は増えてると思いますね。

田舎とかもね、周りの目とか周りの噂も広まりやすいとか、評価過敏のひとにとっては厳しいですよね。

自分自身、田舎から都会への移動は結構大きいことだったかもですね。環境が変わりました。金沢では、めっちゃ派手な地雷服を着てると、あの子何って見られるんです。でも、私が高校生くらいの時代でも、東京だったら普通の光景だったり。

常に自分であるということ

そうか、蘭佳さんは現在大学院にも在籍しているんですもんね?研究生として勉強してる自分と、会社をやってる自分と線引きはあるんですか?

そうですね。修士は終わって、今研究生という制度をつかって研究室に在籍しています。事業のために研究している感じなので、線引きはないです。

オンオフはどうですか?

ないですね。この前、友達と旅行に行ったんですけど、うっすら申し訳ない気持ちを感じながら過ごしていて…。ホテルで仕事の打合せをしたりとか、移動中に仕事の資料をつくったりしてしまって。それ、なんかうざくないですか?友達と旅行しているときに仕事してたら。もう友達と旅行に行けないなとか思って…まあ友達いないんですけど。友達がいないのもやばくて、本当に。本当にその唯一の友達ですら、申し訳ないなとか思っちゃって長時間一緒にいるの、むずかしいなと思いました。

仕事の話とかしないですか?

仕事の話をしすぎちゃうと友達感なくなっちゃう気がして、仕事の話もだんだんできなくなりました。地元の友達(?)とかはけっこうお堅い職業のひとが多くて、会計士の友達には、ベンチマーク企業のIRの資料の読み方を教えてとか言ってたんですけどね。

そこは気をつかっちゃうんですね。まあでもその…仕事中も自然体、メンヘラなんですか。

そうですね。人によって切り替えってできなくて。私の彼氏は逆のパターンで、人によってすごくキャラクターを変えるんですよ。その場に応じて使い分けるのが上手で、使い分けたほうがコミュニケーションがしやすいタイプなんですけど、私が逆にまったくできないです。裏表ないといえばそうなんですけど、彼氏の前でもみんなの前でも変わんなくて、言っちゃだめなこととかも言っちゃって怒られるとかはあります。

幸せに病める世界をつくりたいというビジョンがあるじゃないですか。裏表なく付き合う世界とか、なんかそういうものな気もしてきました。 世の中に合わせるのは難しい人もたくさんいると思うので、誰にも気を遣わず。

そうですね。会社のメンバーも、性格悪いんですよみんな。性格悪いっていうのが悪口ではなくて、なんか性格悪い人多いのっていいよねって話をたまにしたりするんですけど。私の彼氏の場合は、その人に適応した振る舞いができるので性格よく見えると思うんですけど、メンバーはみんなけっこういわゆる社会不適合者というか不器用なタイプが多くて、ひねくれてたり歪んでたりして。それがいいところなんです。 

魚にも、川魚、海魚がいますね。水の性質の違いで、海の魚を川に入れたら死んじゃう、みたいに、それぞれにあった環境ってありますよね。

組織作りで意識しているのは、某IT企業の採用基準で「素直でいいやつ」ってあるじゃないですか。その逆だなーみたいな。逆のポジショニングを目指そう。ひねくれものOK!みたいな。(笑)

ひねくれものっていうのは、今の世の中だとひねくれものだけど、高桑 蘭佳王国で言ったら…

ある意味、素直!

確かにね。これから世に出る若い子とか子供たちにとっても、一つしか選択肢がないと苦しいから、選べたら素敵ですよね。

そこまで他人のことは考えられてないんですけど…でも自分と自分の周りの人たちがちょっとでも生きやすくなったらいいなとは思います。

それに救われる人は、たくさんいると思います。

結果的にそうだといいなと。めっちゃ自己中なんで、あんま人のこと考えれないというか。…それも一つの会社の考え方の方向性というか。他人のことを考えられない、OK!

強烈なロジカル思考と感情的思考

感情的になることはあんまりないんですか?

めっちゃあります。実際は、男性性も女性性もどっちもすごく強いです。ミーティング中に泣いちゃったりとか、むかつく!みたいな感じで。

彼氏と喧嘩しても感情的になります。「もう帰る!」って怒って彼氏に言ったとき、追いかけて謝って引き止めてほしくて。でも、それをやってくれないなというのも同時にわかるから、「今から、帰るっていうからちゃんと引き留めて」って頼んでから実行します。(笑)感情的なんでそれをやらないともう収まりがつかないからやるんですけど、多分このまま帰ったら本当に追いかけて来ないなとロジカルな部分もあるんです。(笑)

面白いですね、自分のなかに二面性があるというか。どっちが本当の自分とかあるんですか?

基本的には、感情的なんだと思います。感情的がゆえにロジカルに憧れる、みたいな。気づいたのは、お父さんより私のほうが論理的なんですけど、彼氏もお父さんも口での論破力が高い。後からテキストにすると私、論破できる。

後から冷静に分析するんですね。

はい。(笑)

そんな視点で見ると、蘭佳さんとしての理想の世界ってあるんですか。

理想の世界…すごく個人的な視点だと、私のこと好きになってくれる友達ができたらいいなと。(笑)私は本当に承認欲求の塊で、世界中の人から認められたい、友達になりたいと思ってもらいたいんです。ある種、お金を払ってでもいいから友達がほしい。遊びに誘われたい。私、3人以上とテーマパークとか遊びに行ったことないんですよ。

ちょっと企画しましょうか、高桑 蘭佳と行くテーマパークとか。

でも私、友達の基準も厳しいです。ヨッ友はいいんですけど、友達としては私の中の友達ランキングと相手の中の友達ランキングがおおむね一致してないと嫌なんです。暇になったときに、遊びに誘う順番が一緒くらいとか。いつ飲みに誘ってもいい感じとか。数か月に1回は、のみに行ったりごはんに行ったりできる人が今0人なんです。

僕1人目でいいですか?

それは…同性の友達がいないコンプレックスがつよいので…。友達契約書のアプリは、つくろうと思ってます。(笑)

本記事中のストロング缶をストローで飲むカットは、高桑氏のアイディア。明るくキュートな笑顔をのぞかせながらも、素直にことばを選び、インタビューに受け答える姿が印象的であった。彼女の冷静な情熱が向く先を今後も注意深く追っていきたい。

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RANKA_TAKAKUWA

高桑 蘭佳(たかくわらんか)1994年生まれ、石川県出身。「彼氏を束縛したい」という一心で起業。現在は株式会社メンヘラテクノロジーのCEOを務める。病んだときに相談できるサービス「メンヘラせんぱい」や、イケメンキャストと話せる通話アプリ「DIALS2」など、メンヘラの気持ちに寄り添ったサービス開発を得意とする。自身をメンヘラだと定義しながらもメンヘラという観点から社会学×データ分析の領域で研究を行い、「幸せに病める世界をつくること」を目指している。

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